知らなかったでは済まされない!不法就労助長罪に該当しないための外国人労働者の正しい労務管理

言うまでもなく不法就労は法律で禁止されており、不法就労した外国人だけでなく、不法就労させた事業主も処罰の対象不法就労助長罪)となります。

不法就労となるのは、次の3つの場合です。

1 不法滞在者や被退去強制者が働くケース

(例)密入国した人や在留期限の切れた人が働く。退去強制されることが既に決まっている人が働く。

2 出入国在留管理庁から働く許可を受けていないのに働くケース

(例)観光等の短期滞在目的で入国した人が働く。留学生や難民認定申請中の人が許可を受けずに働く。

3 出入国在留管理庁から認められた範囲を超えて働くケース

(例)外国料理のコックや語学学校の先生として働くことを認められた人が工場で作業員として働く。留学生が許可された時間数を超えて働く。

不法就労助長罪は、①事業活動に関し、外国人を雇用するなどして不法就労活動をさせる行為、②外国人に不法就労活動をさせるために、自己の支配下に置く行為、③業として、外国人に不法就労活動をさせる行為、又は②の行為に関しあっ旋する行為を処罰の対象とし、これらに該当した者については3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれらを併科されます。そして、両罰規定もあるため、代表者及び法人の双方が処罰される可能性があります。

また、これに加えて、一部の許認可においては、不法就労助長罪に処せられた場合、罰金刑にとどまっても許認可の欠格事由・取消事由に該当する場合がある(代表例は、労働者派遣事業及び有料職業紹介事業の許可)上、技能実習生や特定技能外国人の受入れにも深刻な影響(欠格事由や取消事由に該当する結果、雇用継続不可、一定期間新規受入れ不可)を生じさせます。
*労働者派遣における派遣先や請負契約等、直接の雇用関係がない場合であっても、不法就労助長罪が成立する可能性がありますので注意が必要です。

この不法就労助長罪の怖いところは、たとえ会社側に故意がなかったとしても、在留資格の確認を怠るなどの不注意や入管法等の法の不知があった場合についても成立するという点です。まさに「知らなかった」では済まされないわけです(ただし、過失がない場合には不法就労助長罪は成立しません。)。
*例えば、外国人を雇用しようとする際に当該外国人が不法就労者であることを知らなかったとしても、在留カードを確認していない等の場合には過失があると認定されるため、処罰を免れません。

雇用開始時・業務依頼時の注意点

1 雇用関係が存在する場合、労働施策総合推進法及び同施行規則に基づき、事業主には在留カードにより在留資格等を確認することが義務付けられています。

この際、事業主は、在留カードのコピーやが画像データ等ではなく、必ず原本を確認する必要があります。もっとも、近年、原本を目視で確認するだけでは偽造を見破るには十分とはいえない状況になってきています。

そのため、現在、出入国在留管理庁から在留カードのICチップ情報を読み取ることができる「在留カード等読取アプリケーション」が提供されており、外国人の同意を得て当該アプリケーションを活用することにより、在留カードが真正なものであるかを容易に確認できるようになっています。

さらに、出入国在留管理庁では失効情報照会として、当該在留カードが有効か否かについて照会することができる「在留カード等番号失効情報照会」サイトを公表していますので、こちらもご活用ください。

2 留学生を新卒採用し、「技術・人文知識・国際業務」に在留資格を変更して就労させる場合であれば、その在留資格変更許可申請の手続きにおいて、当該外国人に担当させようとする業務の内容を詳しく説明することになりますので、当該業務が変更を求めている在留資格に対応する活動の範囲内として許容されるか否かについて、地方出入国在留管理局長の判断がなされることになります。

しかし、転職の場合、原則としてこのようなプロセスを経ないため、転職後において在留資格で認められる業務の範囲を逸脱してしまい、資格外活動ないし不法就労・不法就労助長が行われることとなり、その結果、当該外国人の在留期間更新が許可されなかったり、不法就労助長の調査がなされるリスクがあります。

このように、転職後の業務が在留資格の関係で可能か否かが判然としない場合には、就労資格証明書の交付申請が有効です。

就労資格証明書の交付申請は、外国人自身が行う手続きですが、事業主が就労可能か否かを判断する上で非常に有益な書類といえます(これに加えて、転職後の在留期間更新許可申請がスムーズに行われるというメリットもあります。)。

雇用期間中の注意点

雇用期間中は、在留期間の更新時において、更新後の在留カードを確認することが考えられます。

在留期間の管理を当該外国人労働者任せにしてしまうと、更新期限を失念してしまう可能性があるため、事業主も在留期間を把握し、在留期間の更新が近くなってきたらその旨を知らせる等の対応をすることが望ましいといえます。

配置転換・出向時の注意点

外国人労働者を配置転換や出向を行う際には、配置転換後・出向先の事業場で行う業務が在留資格該当性のある業務であるかを確認する必要があります。

仮に在留資格該当性がない業務を行わせてしまった場合には、不法就労に該当してしまうため、注意が必要です。

アルバイトを雇用する際の注意点

アルバイトで外国人を雇用する場合、多くは留学」又は「家族滞在の在留資格を有する者で、資格外活動の許可を有する者が対象となります。

資格外活動の許可については「包括許可」と「個別許可」がありますが、「留学」や「家族滞在」の在留資格を有する者は「包括許可」として原則1週28時間の範囲内で資格外活動を行うことができます(「留学」の在留資格を有する者は所属する学校が学則で定めた長期休暇期間中は1日8時間の資格外活動が可能です。)。

この1週28時間については、週のどの曜日から起算しても1週28時間以内に収まることが必要であるため、シフトの組み方に注意が必要です(個人事業主として活動する場合や客観的に稼働時間を確認することが困難である活動に従事する場合には、包括許可は行わないとされており、個別許可として相当性が認められるかという問題となります。)。

なお、「留学」の在留資格に基づき在留する留学生が資格外活動の許可を得ている場合、当該資格外活動の許可は学校に在籍している間にのみ許可されたものであるため、定期的に在籍確認を行うようにしましょう。

就労時間の制限については、雇用主単位で考えるものではなく、当該外国人労働者単位で考えるものであるため、ダブルワークの確認をする必要があります。

「留学」や「家族滞在」の在留資格で、①資格外活動許可を得ていない場合、②就労は許可されているが、許可されている就労内容を超えた就労をする場合、③許可されている就労時間を超過して就労する場合等は、いずれも不法就労となりますので注意しましょう。

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